迷宮の行き止まりには宝箱がある

雑記です。創作小説はpixivに置いています。

ミステリ読了「キャットフード」(森川智喜)

 森川智喜さんのミステリ「キャットフード」を読みました。面白かった。お気に入り度Aランク。

 どんな話かザックリ言うと、「人間を殺して缶詰にしたい化け猫4匹 VS 人間3人と行動を共にし、成り行きで3人を守ることにした化け猫1匹」の頭脳戦です。

 えっ、化け猫? そうです、化け猫です。生きものにも無機物にも化けられます。

 このあらすじだけで、だいぶ読者を選んでいる気はしますね……。

 こんな方におすすめします:現実にはありえない不思議系の舞台設定で、ロジックを組み立てて解決への道を作るミステリが好きな方に、おすすめ。

 こんな方にはおすすめしません:リアルなストーリーが好きな方、あれこれ理屈を考えたくない方には、おすすめしません。

 

キャットフード (講談社文庫)

キャットフード (講談社文庫)

 

 

 森川智喜さんのミステリを読むのは、これが3冊目です。

 最初に読んだのは「スノーホワイト」でした。ユニークな試みと巧みな構成が面白くて、とても気に入りました。ちなみに、第14回本格ミステリ大賞を受賞した作品です。
 じゃあ、最近書かれた作品はどんなかしらと思い、2020年に出た「死者と言葉を交わすなかれ」を読んでみましたが、これは自分の好みに合いませんでした。
 ならば、デビュー作から順番にと思い、この「キャットフード」を読んだ次第です。とても面白く読みました!

 あらためてネットのレビューなど見てみると、終盤が分かりづらいと感じる方がちらほら。そういう意味では、私は「スノーホワイト」を先に読んであったおかげでスムーズに読めたのだな、と気がつきました。

 スノーホワイト」を先に読むことの大きなメリットは、すぐ思いつくところで、ふたつあります。
 ひとつめ:ストーリー進行の癖というか、謎解きの手順というか、ミステリとしての理屈のこね方が両作品で似通っているので、ユニークな設定と展開に動じることなく、既知のノリで読み進められる。
 ふたつめ:両作品に共通する登場人物がいるため、該当する人物の性格等に関して予備知識を持ち、そうでなければ唐突・強引と感じてしまうかもしれない幾つかのイベントを、違和感なく受け止められる。

 なので、「変化球のミステリは苦手」とためらっている人は、完成度の高い「スノーホワイト」を先に読んでおくことで、癖の強い「キャットフード」も楽しく読めるかもしれません。

 

 一方、スノーホワイト」を先に読むことのデメリットも、もちろんあります。
 ずばり、読者が自身で頭をひねって謎を解こうと思うなら、予備知識を持つことで、謎の難易度が少し低くなってしまいます!
 相当難しい謎でも自力で解ける自信があり、自力で解きたいと意気込む方なら、書かれた順番どおり「キャットフード」を先に読むほうがいいかもしれません。

 トリックに対する手がかりがフェアかどうかについては、一部についてギリギリと感じました。ギリギリ、フェアだ。と私は思いますが、人によりそうです。

 

 タイトルを知らなかったミステリ作品を読んで、満足して、思いがけない拾い物をした気分でホクホクするのって、嬉しいですよね。

 どなたか趣味の合う方が、楽しんでくれたらいいな。