読みたいものがエンタメ系フィクションのほうに偏っている私は、ふだん、歴史ものや伝記っぽいものは敬遠してしまうことが多いです。が、「宝島」(著:真藤順丈)は戦後の沖縄をテーマにしつつ、史実とフィクションをないまぜにして、「消えた英雄と秘密はいずこへ」を軸とした物語らしかったので、ずっと文庫化を待っていました。
なんといっても、書名からして冒険心を刺激するタイトルですし、山田風太郎賞と直木賞を受賞していることから、私のイメージとしては「山田風太郎賞ということはダイナミックな展開であろう」「直木賞ということは読みやすかろう」と、期待がふくらむばかりだったのです。
この夏、めでたく文庫になったのを知り、いそいそと買ってきました。
(それでも念のため、まず上巻だけ買って、間違いなく気に入ったことを確かめてから下巻を買いました。ときどき、上巻までで読むの止めちゃう本もあるので)
(余談ですが、地元の書店で手に入る本は、できるだけ地元の書店で買っています。がんばれ本屋さん!)
そして、さっそく読みました。期待は裏切られませんでした。
濃密な語りで、重みのある内容で、読むのに少し体力(気力?)を使いますが、丁寧で豊穣な物語でした。思った以上に戦後の沖縄史と密接に絡み合ったストーリーで、どこからが史実でどこからがフィクションなのか、(ある程度の見当がつくとはいえ)境目がわからなくなるような気持ちになりました。
(たとえて言えば、漫画の「ベルサイユのばら」を読んだ人が、主人公は架空の人物だと知っていても、フランス革命をめぐる史実とフィクションの境目を見失いそうに感じるのと、似ているのではないでしょうか?)
おおまかなストーリー:
戦後の沖縄で、ひとりの若き英雄の行方がわからなくなり、その親友と、弟と、恋人の3人が、大切な面影を胸に抱きながら、混乱の時代を乗り越え、成長し、それぞれの信念を貫いて生きていく話です。現実に沖縄で起きた事件、実在した人物などが多数登場します。
その他の特徴:
語り部が語るイメージで書かれた文章で、独特の奥行きのある読み心地です。地の文にも読み仮名にも沖縄方言が頻出し、語り部自身の言葉が合いの手のように挟まっています。
いろんなものが溶けている海を思わせるこの文章自体も、間違いなく本作に欠かせない構成要素で、この語りの柔らかさのおかげで、内容に比して深刻になり過ぎず、読みやすい物語になっているのだろうと感じました。ただ、ふだん小説をあまり読み慣れていない人だと、読みづらく感じる部分があるかもしれません。
こんな人におすすめ:
・いくらか重みがあって密度も高い物語を読める余裕のある人
・人が逞しく生きる物語が好きな人
・史実とフィクションが混ざりあった物語に抵抗がない人
に、お薦めしたいと思います。
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電子書籍を読む人なら、kindleの試し読み版もあるようです……あれっ、エッセイとインタビューも付いているんですね。私も読みたいな。
以上、感想でした。
どなたかの読書ライフのご参考になれば幸いに思います♪