迷宮の行き止まりには宝箱がある

雑記です。創作小説はpixivに置いています。

親しみやすく美しい「90歳セツの新聞ちぎり絵」

 お恥ずかしいことに、私は美術的なものをクリエイトするセンスが非常に貧しく、平面であれ立体であれ、何をどうしたら美しいデザインになるのかについて、直感というものが働きません。理屈を学べば多少の助けになるのでしょうけれど……。絵を描くのも、サラダを彩りよく盛り付けるのも、着る服をおしゃれに組み合わせるのも、ぜんぶ苦手です。

 でも、他のひとが生み出した美しい創造物を見るのは、とても好きです! 理論も技法も知らなくたって、「きれいだな」「元気が出る」「胸に響く」等、様々な気持ちを搔き立てられますし、そういうドキドキを感じながら美しいものを鑑賞するのは楽しいです。
 そういえば、ある人がある作品を「好き」と感じるかどうかは、必ずしも技術的な完成度で決まるわけではない、というのも、なかなか面白いですよね。それってやっぱり、センスとか、相性とか、何か理屈では片づけられないものがある、ということなのでしょうか。

 と、すみません、前置きが長くなりました。本題、本題。

 あるとき、ネットを見ていたら、ブロッコリーちぎり絵が紹介されていたんです。ひと目見て、「わあ、すごい!」と思いました。新聞紙の、色刷りの部分をちぎって貼ってあるのですが、新聞紙だからこその印刷の濃淡が活かされて、奥行きのある色彩でみずみずしいブロッコリーが表現されていました。

 作者のかたはだいぶご高齢とのことでした。新聞ちぎり絵は比較的最近始められた趣味で、思うまま感じるままに手早く作っていらっしゃる、とも。そういった背景までを含めて、素敵な作品だなあと思いました。何才になっても、未来には未知のワクワクが待っているんだ、と思えました。

 そうしたら、最近、「あっ、本になってたんだ!」と発見したのです。
 それがこの、「90歳セツの新聞ちぎり絵」。

 さっそく買って、ひらいてみました。どの作品も、生活に根差した親しみやすいテーマの絵で、やっぱり新聞紙の濃淡が作品の奥行を増しているように感じられます。ブロッコリーの絵を初めて見たときと同じように、ページを開いて新しい作品を見るたび、そのみずみずしさに驚きます。

 作品のひとつひとつに、作者であるセツさんのコメントが添えられているのも、私としては興味深く、嬉しい構成でした。ここを直したら良くなったとか、娘さんに見せたらこう言われたとか。セツさんがちぎり絵を始められたきっかけ等も知ることができます。

 また、この本とは別に、ポストカードブックが出ていることも、別途知りました。こちらのほうが新しく、書名も「91歳」です。ポストカード1枚に作品ひとつが配置されており、作者コメントの併記はありません。「90歳」を読んだ人が新作を見たくなったり、お友達にお便りして紹介したいと思ったりしたときに良いと思います。

 どちらの本も、表紙の絵を見るだけで引き込まれてしまいます。
 なお、本屋さんで探されるときは、「90歳」と「91歳(ポストカードブック)」の2種類があることを念頭に置いて、間違えないようにご注意くださいね。