先日、機会があって、フジコ・ヘミングさんの演奏会に行きました。
とてもお年を召されているので、舞台に出てくるときも、手押し車を押したり、介添えの方に助けられたりして歩いていらっしゃいました。
ピアノを弾かれているときも、少し、音を外す箇所があったりしましたが、堂々と貫禄のある演奏を聞かせていただききました。曲と曲の合間に、一言二言、お話しされることもあって、「今日は指が固くて困っています」と、苦笑して話していらっしゃいまました。
技術以外の何かを、教えられた演奏会でした。
「来て良かった」と思いながら帰りました。
実は、演奏会が始まる前、会場で、フジコさんのピアノ演奏CDのパンフレットを見ました。
5枚組のCDに、たくさんのピアノ演奏が収められているのですが、フジコさんを一躍有名にしたリストの「ラ・カンパネラ」については、収録年数が異なるものが5回分入っていて、それを見て、私は「勇気があるんだなあ!」と思っていました。つまり、同じ曲を数年前に弾いたぶんと今年収録したぶんとで、簡単に聴き比べられてしまうということですから、もし技術の衰えた部分などがあれば誤魔化しがききません。
でも、演奏会を聞いた後は、「そうか、わかった。5回分収録されているのは、そういうことじゃないんだ」と得心しました。「収録されているのは、いかに素晴らしい技術で演奏をするかではなく、フジコ・ヘミングさんという演奏家がどのように生きているかという、生き様なんだな」と。
もちろん、演奏会についても。技術のパーフェクトさを見せるのではなく、フジコ・ヘミングさんというピアニストが、生涯現役として弾き続けている、その生き様を見せてくださっているのだな、と。
ものすごく久しぶりに生の音楽を聴きに行きましたが、とても良かったです。
※5枚組の演奏CDはこちら。