ネビュラ賞、ローカス賞、イグナイト賞、コンプトン・クルック賞の4冠に輝いたというSF小説、「精霊を統べる者」を読みました。
豪華絢爛スペクタクル映画を1本見たような読後感です。満足です。
著者のP・ジェリ・クラークさんは、期待の新鋭作家さんとのことで、今後が楽しみ。
翻訳は鍛治靖子さん。SFやファンタジーの翻訳をされている方です。
エジプトが舞台、というだけでも、日本人の私から見たら、異国情緒を感じて強く惹かれるのですが。
本作は、いわゆる歴史改変物SFで、ここに描かれているエジプトでは、過去に異世界への扉がひらき、以来、精霊(ジン)と人間とが入り混じって暮らしています。
強力な精霊たちが住んでいるため、(現実ではイギリスに負けた)戦争にも負けることがなく、魔法と科学が混在して発展し、独自の文化が栄えているというわけです。
エジプトと! 精霊の! 文化が入り混じった世界観……!
色彩豊かな文章の中から、独特な世界観がググっと立ち上がります。
SFと言いながら、精霊や魔法が存在しているのでファンタジー寄りな雰囲気でもあります。
想像するのが楽しい、という意味では、時間のあるときに腰を落ち着けて、細部の描写を楽しんで読むのに適した本だと思います。
さまざまな大きさや色をした精霊たちの造形や、ユニークな発展を遂げた建築デザイン等を、時間がないからと読み飛ばしてしまっては、この小説の良さを半分くらい損ねてしまいそう。
挿絵があったらなあ! と、何度か思いました。カラー口絵とか。
でも、絵があるとそのぶん、読者の想像を限定してしまうのかなあ……?
ちなみに、主人公は女性で、その恋人も女性で、仕事でバディを組む相手も女性です。
三人とも軽やかで活動的で、フェミニズムとシスターフッドのスパイスが効いた物語です。
彼女たちはファッションにもこだわりがあって、たとえば、エージェントである主人公は、たいていのシーンで、ユニセックスなスーツをクールに着こなしています♪
文章を手がかりとして、作者の創造したユニークな世界について想像をめぐらすのがお好きな方は、機会があればお手に取ってみてください。
ただ、単行本で、だいぶお値段が張るのが玉に瑕なんですけどね……、早く文庫になるといいなと思います。