迷宮の行き止まりには宝箱がある

雑記です。創作小説はpixivに置いています。

謎とドラマの魅力が両立している「カインは言わなかった」(著:芦沢 央)

 この作者さんの小説は初読みです。作者名の読み方は「あしざわ よう」さん。
 これまで読んでいなかったのは、いわゆる「イヤミス」を書いている作者さんというイメージが強かったためです。私はあまり「イヤミス」には惹かれなくて……。

(ちなみに、「イヤミス」というのは、読後感がイヤな感じのミステリのことです。)
(その「イヤな感じ」が魅力になる小説もあるよね、というのは分かるのですが。)

 芦沢さんは人気作家さんなので、気になることは気になっており、よし1冊読むぞと思ったときに、「この作品はイヤミスと言われていないようだ」という作品を選びました。
 それが、最近文庫になった「カインは言わなかった」

 読んでみたら、とても面白かったです!
 終わり方にも明るさがあり、期待通り、イヤミスではありませんでした♪

主な魅力:

 まず、文章がきれいで読みやすいので、するすると物語の中に入り込めます。文章の好みが合うのって、それだけで少し、嬉しくなっちゃいますよね。

 読み始めるとすぐ、「誰が?」「誰を?」というシンプルで大きな謎が提示され、終盤に真相が明かされるまで、ずっと大きな存在感を持ち続けます。真相に対する期待がじわじわ高まります。

 そして何より、展開されるドラマが素晴らしい!
 一人ひとり性格の異なる登場人物たちが、生き生きと行動し、きめ細やかに描写されていることで、物語全体の説得力と奥行きが増していると感じました。

その他メモ:

書き留めておくとご参考になるかもしれないことを、箇条書きで。

・トリックやロジックによるパズル的な謎解きはありません。そのへん重視でミステリを選ぶ方はご注意ください。

・事件の真相は明らかになりますが、いくらか空白の部分が残され、読者の想像に委ねられます。他のかたのレビューを見ると、そこがモヤッとする方も結構いらっしゃるようです。

・バレエの舞台をめぐる物語ですが、バレエについて無知な私も、十分に面白く読みました。知っている人だと、もっと面白く読めるのかもしれません。

 

 ……ということで、ご紹介いたしました。私は満足しました!
 とても気に入ったので、同じ作家さんの別の作品も読んでみたいと思います。
 たまには、イヤミスも読んでみようかなあ。