迷宮の行き止まりには宝箱がある

雑記です。創作小説はpixivに置いています。

SFミステリ「統計外事態」(著:芝村 裕吏)感想

芝村裕吏(しばむらゆうり)さんの小説は初読みでしたが、面白かったです。近未来SF小説で、ミステリのドキドキ感もあり。お気に入り度Aランク。

概要をまとめると……

様々な問題を統計で解決できるようになった近未来。
統計を扱う仕事をしている主人公は、いつのまにか事件に巻き込まれ、絶体絶命の大ピンチ!
駆けつけてくれた後輩と二人で、なんとか事態を打開しようと奮闘するも、状況は特異で謎めいており、おいおい、こんなシチュエーションでは統計が適用できないじゃないか、こんなの「統計外事態」だ!

と、ここで「統計外事態」というタイトルに結びつくわけです。

ストーリー進行がやや強引なところもありますが、そこは「近未来だとそうなんだね」くらいに鷹揚に受け止めて、テンポよく進んでいく物語の波乗りを楽しみましょう。
ところどころに古今東西SF作品の小ネタがあるのも、SF好きとしてはつい嬉しくなっちゃうポイント。

統計外事態 (ハヤカワ文庫JA)

統計外事態 (ハヤカワ文庫JA)

 

見た目は少し、地味な本なんですよね。真面目そうな漢字5文字のタイトルで、表紙イラストも無難な構図で、パッと見が地味なせいで損をしていないかしらと心配になるくらい。
でも、可能な限りネタバレを避けようとした結果であるなら、仕方ないか、とも思います。つまり、この小説の一番の魅力は、しなやかで思い切りのよいストーリー展開!と私は思うのですが、読んだ時の楽しみを損なわないように、読む前の情報を極力減らすデザインにしてくれたのかもしれないな、と。

実際、読み終わったあとで表紙イラストを眺めると、「これ以上は何を描いてもネタバレになりそうだし。このイラストも工夫されているよなあ」と思います。帯を外したところに猫が描かれているところも嬉しいです。

ふむ。そしたら、見た目が地味なぶんをカバーすべく、読み終わって満足した人たちが、みんなで「この小説、面白いよ」と広めて行くのがいいかな、と思います。いかがでしょう。